リュック・ベッソン監督の映画「ヴァレリアン 千の惑星の救世主」を観ました。
地球軌道上の国際宇宙ステーションが拡張を続け、質量が大きく成り過ぎた為に軌道上から外宇宙へ放たれて400年後の28世紀、宇宙ステーションはアルファと呼ばれる移動都市と成り、千を超える異星人種族からなる数百万の市民が暮らしていた。アルファの連邦捜査官ヴァレリアン(デイン・デハーン)は相棒のローレリーヌ(カーラ・デルヴィーニュ)と共に、ミュール変換器を入手する任務の為に惑星キリアンに向かう。
キリアンに向かう途中、ヴァレリアンは夢を見る。惑星ミュールではパール人達がエネルギーを持ったパールをコンバーターという小動物に複製させながら、自然と共に平和に暮らしていたが、突如空から巨大な宇宙戦艦が墜落し、その爆風でパール人の姫リホ(サッシャ・ルス)が死んでしまう、という夢だった。ヴァレリアンとローレリーヌは、キリアンの異次元市場に潜入し、闇商人のアイゴン・サイラス(ジョン・グッドマン)からミュール変換器とパールを強奪する。ミュール変換器はヴァレリアンが夢で見たコンバーターであり、ヴァレリアンはミュールが30年前に滅んでいた事を知る。
アルファへ帰還したヴァレリアン達は上司のフィリット司令官(クライヴ・オーウェン)から、アルファ中心部に未知の力による汚染が広がっている事を知らされる。その対策を話し合うサミットが開かれる事と成り、ヴァレリアンはサミットに参加するフィリット司令官の警護を任されるが、サミットの最中にフィリット司令官は誘拐されてしまう。フィリット司令官を追ったヴァレリアンも行方不明と成り、ローレリーヌは上層部の反対を押し切ってヴァレリアン捜索に向かう。無事ヴァレリアンを発見したローレリーヌであったが、そこは排他的な種族であるブーラン・バソールが支配する場所であり、ローレリーヌはブーラン・バソールに捕らえられてしまう。ヴァレリアンはローレリーヌを救う為、姿を自在に変えられる種族のバブル(リアーナ)に助けを求める、といったあらすじです。
フランスのピエール・クリスタンとジャン=クロード・メジエールによる漫画「ヴァレリアンとローレリーヌ」を実写化した作品です。
原作は1967年より連載が始まり、様々な作品に影響を与えているそうです(私は未読)。その原作に影響を受けた映画などが次々と作られた後の2017年に本作は公開されました。
という訳で、本作こそがオリジナルなのですが、本作の模倣作品といえる物達が先に作られていたせいで、本作は色んな作品のパロディにしか見えないのが残念です。
登場する宇宙船や技術、話の展開は何処かで見たものばかりで、本作こそが原点といわれても、既視感たっぷりで残念な印象しかありませんでした。斬新なものにしようとすると原作から離れてしまうのでしょうが、それならいっそ実写化しなければ良かったのではないかと思えます。
ヴィジュアル・エフェクトにはかなり力が入れられ、異次元市場なんて見事でしたが、他は無駄に力が入っていたかな、という感じです。
無駄かどうかは何ともいえませんが、本作はやたら出演者が豪華です。主演の2人は、本当にそんなんで良いの?というキャスティングですが、周りはチョイ役にも大物俳優が当てられています。とんでもなく不釣り合いな役でイーサン・ホークが出演したり、ルドガー・ハウアーがちょっと映ったり。
何より、何故かハービー・ハンコックが登場したのには驚きました。たぶん、純粋に俳優として映画に出たのは本作が初めて(後に他の作品に出たという話も聞きません)だと思います。偉大な音楽家でピアニストのハンコックがわざわざ役者として出演した理由、観ても解りませんでした(笑)
長年映画を観ている人間には既視感が気に成って楽しめない作品でしたが、映像などは見事に作り込まれた作品ですので、若い世代が純粋な目で観れば充分に楽しめる傑作なのではないでしょうか?