クリント・イーストウッド監督の映画「
センチメンタル・アドベンチャー」を観ました。
1930年代の米国南部が舞台。
無名の旅回り歌手レッド・ストーバル(クリント・イーストウッド)は、テネシー州ナッシュビルで開かれるオーディションに車で向かっていたが、途中金策の為に、農家に嫁いだ妹エミー(ヴァーナ・ブルーム)を訪ねる。しかし間もなく砂嵐が襲い、エミー一家はカリフォルニア州へ移住する事に成ってしまう。レッドと意気投合していたエミーの10代前半の息子ホイット(カイル・イーストウッド)がナッシュビルまで運転手として同行し、カリフォルニア州へ行かず故郷へ帰るホイットの祖父(ジョン・マッキンタイア)も同乗する事と成った。
途中レッドは、貸しのある興行師アーンスプリガー(バリー・コービン)を訪ねる。アーンスプリガーは金を返す代わりに歌手を目指すマーリーン(アレクサ・ケニン)を差し出そうとするが、レッドが拒否すると保険金詐欺を持ち掛ける。詐欺話に乗ったレッドであったが騙されており、窮地に陥るもアーンスプリガーから大金を奪って旅を再開するが、マーリーンが車に潜り込んでいた。マーリーンの歌唱力に呆れたレッドは彼女を追い返すが、車の修理の為に滞在した町に再び現れる、といったあらすじです。
クリント・イーストウッドが息子のカイルと共に主演した、カントリー・ミュージックが主体の所謂ロードムービーです。
クリント・イーストウッドといえば、監督作からも分かる通りのジャズ・ファンで、カイルも現在はジャズ・ベーシストとして活躍しており、カントリーとは無縁な感じですが、西部劇スターだった事もあり、イメージはピッタリです。そして、意外と歌手活動も行っており、本作でも自らレッドとして歌っています。作曲をする事でも知られていますが、本作では歌っているだけの様です。
カントリー歌手に扮して、息子まで引っ張り出してクリント・イーストウッドが描いたのは、滅びの美学だと思います。
ひたすら夢を追い続けながら身を磨り減らし、ボロ雑巾の様に成って消えていく(でも女性にはモテる)、そんな姿に男子たるもの一度は憧れるはず。(ちょっとネタバレ)さらに本作では、本人は一部の人の記憶に残るものの無名のまま散り、遺した曲だけが広まっていくのですから、理想の滅びではないでしょうか。
大スターで名監督というアメリカンドリームの体現者たるクリント・イーストウッドが、自分とは正反対の無名の歌手の最後の旅を描いた、ちょっとナルシストっぽさを感じるものの、なかなかの名作だと思います。