アイスランドの歌手
ビョークのアルバム「
ビョーク/
ビョーク・グズムンズドッティル」を紹介します。
1977年にビョークが12歳で発表したデビュー・アルバムです。
ビョークは6歳から音楽学校に通い、フルートとピアノを学んでいたのですが、11歳の時に学校のリサイタルでティナ・チャールズのヒット曲「愛の輝き」を歌って評判と成り、学校の教師がその録音(ネットで探せば聴けます)をラジオ局に送りました。録音がラジオで放送されるとレコード会社に認められ、本作が制作される事と成りました。
「愛の輝き」が評判と成った事もあり、本作には多くの英語圏のヒット曲のカヴァーが収録されています。「愛の輝き」は頑張って英語で歌っていたビョークですが(今では英語ペラペラですけど)、本作では英語圏の歌にはビョルグヴィン・ホールムという人によるアイスランド語の歌詞が付けられています(訳詞なのかオリジナルの歌詞なのかは僕はアイスランド語が解らないので不明です)。
オリジナル曲も用意されていますが、何れも歌詞はホールムによるものです。
参加したミュージシャンはアイスランドでは名の通った人達のようで、その内ベースのパゥルミ・グンナルソンとドラムスのシグルズール・カールソンがプロデューサーも兼任しているようです(裏ジャケットに写っているのはこの2人なのか?)。
演奏の方は、ビョークの歌唱と共に荒々しく、何とも手作り感溢れる音楽に仕上がっています。
「Arabadrengurinn」ビョークの継父でギタリストのサイヴァル・アルナソン作曲のオリジナル曲で、アルナソンは演奏にも参加しています(この曲のみ)。
曲名は「アラブの少年」という意味らしいのですが、イントロはシタールが鳴り響くインド風で、曲自体は何ともズンドコしたディスコ・ナンバーです。当時は世界中でアジア風味の可笑しなディスコ・ナンバーが作られていましたが、これもそんな1曲といったところでしょうか。
「
ユア・キス・イズ・スウィート」
シリータ・ライトのカヴァー(作曲は
スティーヴィー・ワンダー)。何とも珍妙で安っぽい電子音が鳴り、少女が「
ンマンマ♪」と
赤ちゃん言葉の様な歌を歌う珍曲です。
「アルタ・ミラ」エドガー・ウィンターのカヴァー。結構原曲を忠実に再現していますが、ビョークの歌唱はぶっきらぼうです。終盤に聴かせる絶叫が、既にビョークはビョークだったのだな、と感慨深いです。
「ヨハンネス・キャルバル」ビョーク作曲のインストゥルメンタルのオリジナル曲。ビョークのリコーダーが奏でるメロディーは単純ながらアイスランド伝承曲的で、はやり既にビョークらしい世界感があります。
「Fúsi Hreindýr」本作に全面的に参加しているギタリストのビョルグヴィン・ギスラソン作曲のオリジナル曲。明るくポップな曲で、ビョークも滑らかに歌っており、なかなか良い出来です。
「Himnaför」ホールムによる作詞作曲のオリジナル曲。童謡の様な感じの曲ですが、何故か終盤に絶叫が入っています。ビョークに限らず、アイスランドの人って絶叫するもんなのですかね?
「オリバー」ユー・アンド・アイの一員として知られるヨハン・ヘルガソン作曲のオリジナル曲。愛らしく爽やかな曲で、ビョークの歌声も可愛らしく、子供番組の挿入歌なんかにピッタリな出来です。
「フール・オン・ザ・ヒル」ザ・ビートルズのカヴァー。ビョークが吹くフルートとリコーダーが物悲しい雰囲気を醸し出していますが、肝心の歌はぶっきらぼうです。
「Músastiginn」ギスラソン作曲のインストゥルメンタルのオリジナル曲。ギスラソンが弾くシンセサイザーがポップなメロディーを奏で、ビョークは2番手的なメロディーをリコーダーで吹いています。これまた子供番組に良さそうな感じです。
「クリストファー・ロビン」メラニー・ソフィカのカヴァー。この曲のみコルブルン・ヨーンスドッティルという人がアイスランド語の歌詞を書いています。
アコースティック・ギターのみをバックに歌う、ここでのビョークの歌唱は巧いです。たぶん当時の彼女は、こういうシンプルなアレンジが好みだったのかもしれません。
正直いって、純粋に音楽的には珍盤の類に入るアルバムだと思います。しかし、後に世界的巨匠と成ったビョークのデビュー盤(自作曲が1曲しか採用されなかったのが不満だったそうで、直後にプロ活動は一旦止めてます)でありますから、歴史的珍盤と呼ぶことにしましょう(笑)