ジャニック・フェイジエフ監督の映画「
オーガストウォーズ」を観ました。
2008年(2012年公開)8月のロシア及び南オセチアが舞台。
モスクワの菓子職人クセーニア(スヴェトラーナ・イワノーワ)は幼い息子チョーマ(アルチョム・ファディエフ)を抱えたシングルマザーだが、恋人で銀行員のエゴール(アレクサンドル・オレシコ)との結婚を考えていた。チョーマはコスモボーイというキャラクターの話がお気に入りで、自らがコスモボーイと成り、相棒のロボット(ユゴール・ベロエフ)と共に活躍する空想に耽り、エゴールには懐こうとしなかった。
クセーニアはエゴールからソチへの旅行へ誘われていたが、南オセチアの平和維持軍で働く元夫でチョーマの父ザウール(ベロエフ)からチョーマを遊びに来させるよう連絡が入る。クセーニアは南オセチアの情勢が不安であったが、ザウールの説得もあり、チョーマをザウールが暮らすシダモンタ村へ行かせてしまう。しかし、チョーマがシダモンタ村へ到着して間もなく南オセチア紛争が勃発し、クセーニアは単身チョーマの救出へ向かう。
ウラジカフカスへと到着したクセーニアはバスでシダモンタ村を目指すが、ミサイル攻撃を受けてバスは大破してしまう。運良く生き残ったクセーニアは、ジャーナリストの振りをするなどして何とかザウールと落ち合う約束の避難所までたどり着く。しかしザウールと連絡が取れなくなった事から、クセーニアはリョーハ(マクシム・マトヴェーエフ)率いるロシア軍偵察部隊に同行しシダモンタ村を目指す。
一方、チョーマは父と祖父母がグルジア(ジョージア)軍に殺されてしまった為、1人重傷を負いながら家に取り残され、出血のショックもあり、母からの電話も理解出来ずに怯えていた。クセーニアは混乱する息子に、ロボットとしてコスモボーイを救出に向かう電話をして勇気づけ続ける、といったあらすじです。
南オセチア紛争を少年の空想の世界を絡めて描いた映画です。
ブルーレイのジャケットなどでも、その空想の世界を前面に出していますが、実際の内容はSF映画では無く、非常にリアルで臨場感溢れる戦争映画です。
空想の世界も「
トランスフォーマー」を思わせる見事な映像で作られていますが、
ロシア軍の全面協力で作られたという戦闘(戦争)シーンは凄過ぎます。
第二次世界大戦をリアルに描いた映画は数多くありますが、本作ほど現代の戦争をリアルに描いた映画は希でしょう。しかも、巻き込まれた一般市民の目線と、戦闘に加わる軍人の目線両方で描かれ、如何に戦争が恐ろしいものか実感を伴うほどリアルに伝わって来るのです。
そんな状況で、息子を助ける為に命懸けで奔走する若き母の姿が胸に迫ります。母は強し、なんていいますが、クセーニアに限らず、母親というものは命を賭けて子供を守っているものです。そんな母親への感謝を感じる映画でもあります。
ロシア軍が協力し、ロシア首脳陣が格好良さ気に描かれていたりしますが、けっしてプロパガンダ映画に成っていないのも好感が持てます。
分かり易く戦争批判はしていませんが、ロシア軍は正義でも無く、グルジア軍が悪でも無い事がさり気なく描かれ、戦争自体が悪であると訴えている事が解るのです。
現代ロシア映画の映像技術力の高さ、良心も実感出来る、そして何といっても(笑)クセーニアことイワノーワが超美人という、戦争映画の傑作だと思います。