市川崑監督の映画「
八つ墓村」を見ました。
1949年(1996年公開)、神戸市の石けん工場で働く青年、寺田辰也(高橋和也)は両親を亡くしてからは天涯孤独の身だった。ある日、辰也は諏訪弁護士(井川比佐志)の事務所に呼び出され、岡山県の八つ墓村から来た井川丑松(織本順吉)と森美也子(浅野ゆう子)に引き合わされる。丑松は辰也の亡き母鶴子(鈴木佳)の父親であり、孫の辰也の行方を捜していたのだった。辰也の知らない実の父は、八つ墓村の歴史ある資産家田治見家の先代当主要蔵(岸辺一徳)であり、現当主久弥(岸辺)は辰也の腹違いの兄であった。久弥は病身で子供も無く、田治見家を辰也に継がせるつもりだった。丑松は辰也との接見の最中に吐血して死亡する。毒殺であったが、毒は事務所に来る前に飲まされていた事が判明する。八つ墓村へ行く決心をした辰也であったが、自宅には惨劇が起こるので八つ墓村へ行ってはいけない、という内容の怪文書が届いていた。
美也子の案内で辰也が田治見家へ行くと、久弥の他に、久弥の双子の大伯母で家を取り仕切る小竹(岸田今日子)と小梅(岸田)、久弥の妹春代(萬田久子)、久弥の従弟里村慎太郎(宅麻伸)、慎太郎の妹典子(喜多嶋舞)が共に暮らしていた。また、辰也は久弥の叔父で医者の久野(神山繁)と、村の住職洪禅和尚(石橋蓮司)にも紹介される。辰也は自身が生まれた場所という離れに滞在する事になるが、そこに濃茶の尼(白石加代子)が現れ、帰らないと八つ墓明神の祟りがあると脅すのだった。
翌日、久弥が吐血して死亡する。駆け付けた等々力警部(加藤武)の捜査により、久弥が普段服用していた薬に毒物が混ぜられていた事が判明するが、そこに私立探偵金田一耕助(豊川悦司)も現れる。金田一は、辰也の身を案じた諏訪弁護士の依頼で辰也の身辺調査に訪れていたのだった。現場には八つ墓明神の護符が残されており、金田一と辰也は八つ墓明神について調べる。
戦国時代、毛利一族との戦いに敗れた尼子一族の落ち武者8人が村に落ち延びて来た。当初村人達は8人を匿っていたが、懸賞金に目がくらみ、村の長で田治見家の祖先庄左衛門(岸辺)の手引きで8人を殺害した。その後、庄左衛門が発狂した様に村人7人を殺し、自ら首をはねて自殺したことから、村人達は落ち武者8人の祟りであると恐れ、8人の墓を八つ墓明神として祀ったのだった。
久弥の葬儀が行われた夜、辰也が秘かに納屋へ入っていく小竹と小梅の後を付けると、そこは鍾乳洞へと繋がっており、2人は鎧装束を纏ったミイラにお供え物をしていた。そのミイラは、26年前に一晩で村人32人を殺害して行方不明と成っていた要蔵の死体だった、といったあらすじです。
横溝正史の金田一耕助シリーズを市川が17年ぶりに映画化した作品です。
1970年代の前5作に出演した俳優達が再び出演しており、加藤に至っては毎度の等々力警部で、やはり同一人物の様で別人(毎回金田一とは初対面)です。そして、全作に出演していた小林昭二が本作でもちょい役で出演していますが、残念ながら本作が遺作と成りました。
しかし、何故か肝心の金田一が石坂浩二から豊川に替わっています。豊川は石坂の金田一を意識したと思われる演技ながら頑張ってはいるのですが、何しろ怪しいのです。辰也は信頼を寄せていますが、観ている側としては、登場人物の中で一番怪しいのは金田一、という位に胡散臭く感じました(笑)
原作は、実際に岡山県で起きた大量殺人の津山事件を元にしている事もあり、ダークなイメージで何度も映像化されており、それらの作品と違いを出したかったのか、何とも軽やかな味わいです。
岸田や白石が超怪しい演技を見せますが、不気味さも極まると逆に滑稽に成るといった感じで、恐怖感の薄い謎解き映画に仕上がっています。